リク小説〜言霊戦隊VS最凶の敵、十四の流星〜
「うわぁ〜〜〜!!」
という悲鳴を引き金に、
「「「「「言霊戦隊、ゲンレイジャー!!!!」」」」」
「グワァァァァ!!」
爆発音が響いた。
「…途中を省略しすぎじゃないか?」
「作者の特権だ」
存分に破壊された市街地の一部で、赤装束に身を包んだ少年、龍哉と、白装束に身を包んだ少年、ほわいとすたあが言葉を交わしていた。
「いや、でももうちょっと俺たちのかっこいいとこをさ…」
緑の卓弥がそうつぶやく。
「いや、そうもいかなくて。今回は作者の、つまり俺の本体の創作意欲が足りない。よってスピーディに物語りは進む」
「身も蓋もねぇ!」
卓弥がそう叫んだ瞬間、高らかな笑い声が響く。
「何?何なの!?」
ピンクの夏葉が叫ぶ。
「ああ、時間だ。巻き込まれたくないんで、俺はちょっと諸事情で消えることにしておいてくれ」
「そうは問屋がおろさないんだなぁ、これが」
ほわいとすたあがかなり裏事情を示唆する発言をすると同時に、その首筋に不気味な声と共に刃物が突きつけられる。
刃物を持ったマントの人間をみてため息をつくほわいとすたあをよそに、増え続ける笑い声。
「…なんだ?10人を超えてる…」
隼がつぶやく。と、瓦礫の影から、何人もの人間が現れた。
「オイほわいとすたあ。あれは何だ?」
龍哉が首筋に刃物を突きつけられているほわいとすたあに問いかける。
作者は死んでも死なないのはこの間の一件で確認済みである。
「え〜〜と、俺が言っていいのか…」
ほわいとすたあは言いよどむ。その目は明らかに泳いでいて、表情は諦めの色が濃かった。
「その必要はない!」
一際高い瓦礫の上に立つ影から発せられたその声に、6人の目が向けられる。
「誰だ!お前は!」
黄の武が叫ぶ。
その影は小さな笑いをあげ、体を覆っていたマントを脱ぎ捨てる。
「問われれば、我こそは言禍軍が四天が一人、“百矢”のリシャス!」
「うわぁ、俺って意外とせこい性格してるなぁ…キャラ考えるのめんどくさいしなぁ…」
捕まったままのほわいとすたあは一人つぶやく。もちろん、その意味は彼自身と作者しかわからない。
「四天…四天王?うわ、ホントにいたのか…」
隼のその言葉を、リシャスはどう受け止めたのか、恐らく隼がいつもの表情でその言葉を言ったため、はたから見ると馬鹿にしてるようにしか見えないのだが、
「貴様、私を愚弄するかっ!私をあの卓真ごときと一緒にして欲しくはないね!」
怒った。
「まぁまぁリシャス様、あの程度の下賤の者の言葉など耳に入れぬほうが…」
いつの間にかリシャスのそばに立っていた女がそういう。
リシャスはようやく落ち着きを取り戻したようだ。
「……そうだな。それでは後はお前たち“十四の流星”にまかせる」
次の瞬間には、そういい残したリシャスの姿は消えていた。
「…十四…の…流星…?」
夏葉がつぶやくと同時に、14のマントが脱ぎ捨てられる。
「私たちこそは、あんたたちゲンレイジャーを倒すべく推参した、不屈の戦士!私は夢宮さんご!」
「お前たちに絶望を与える!私は速風彼方!」
「我らこそは、14の裁きの星!我が名はヒロキ!」
「そのほか俺を含めて11の戦士たち!」
「省略するな!」「せっかく考えてたのに!」「文句は作者に言え!」「お前ら三人だけずるい!」「なんか文句あるの?」
「…えーーーと…」
いきなり内輪もめを始めた十四の流星(一人はほわいとすたあのそばにいるので正確には13人)を、ほわいとすたあ以外の5人は呆れて見守るしかない。
「いい加減にしなさい。全員実験台にさせられたいのですか」
13人のうちの一人が発した言葉に、その場の空気が固まる。注目を浴びた科学者のような男はゆっくりと腰を上げる。
「私たちの目的は奴らを倒すことでしょうが」
「しかしNaHCO3!」
「黙りなさいロード」
かなりの威圧感。リーダーという雰囲気ではないが、はっきり言って怖い。このNaHCO3という男は。
「…む、確かにケンカしててもしょうがないよね」
先程ロードと呼ばれた男の隣にいた少年が言う。
「じゃあどうしろと?レイン」
「この怒りを奴らにぶつけろ、って奴でいいんじゃない?風影蓮」
一瞬の沈黙の後、すべての敵意がゲンレイジャーへと向けられる。
固まる5人をみて、ため息をつくほわいとすたあ。
「…オイ、どうゆうことか知ってるんだろ、ほわいとすたあ」
龍哉の感情のない言葉。ほわいとすたあは苦笑いを浮かべながら、
「作者より偉いのって誰か知ってるか?」
「は?」
「読者だよ。そうゆうことだ」
その会話を皮切りに、13人が躍り出る。ほわいとすたあは、自らの首に刃物を突きつけている男を投げ飛ばす。
男はしかし、空中で回転し着地する。
「…おかしいな、俺のシナリオだと今のでお前頭蓋骨折で終わりなんだけどな。そんなに強くていいのか?タイムマシン」
「ご愁傷様」
固まっていては数の差で潰される。
ゲンレイジャーは散開、それぞれ2人から3人を相手にする形になる。
「ほわいとすたあ!お前作者だろ!どうにかしろ!!」
卓弥の悲鳴に似た叫びに、ほわいとすたあは軽く言い返す。
「無理。今回は俺も死んだら終わりだし、力も制限されてる。全部読者の力だな。ただし…」
夏葉と武のからだが光り始める。
「その二人には言具がプレゼントされる。公平だねぇ」
「どこがだっ!」
「よそ見してていいのかい!?」
「っっ!!」
早くも乱戦に突入していた。
「なんだ、お前たちは」
ブルーの隼は言具を出しながら、二人の連携攻撃をしのぐ。
「私はミト!」
「そして私はプラマイゼロ!」
「二人は!」
「ぷり○ゅあ!」
「…わかった。よーくわかった。お前たちが馬鹿だって事は」
ため息をつきながら言具を強く持ち直す隼。そこへ向かう高速の二人。
「みよ!この連携攻撃!」
二人は手から伸びた長い爪をかざす。地を蹴ったその直後には、隼の目の前に到達していた。
隼は間一髪で弾き返す。そのうちに防戦一方に追い込まれる。
後方からの爪をかわした、と思ったら地面すれすれから浮かび上がるもう一人。
すさまじいまでの連携に、隼は体制を崩す。そこに襲い掛かる二人。
「「必殺!」」
二人の呼吸が重なり、強大な力がその姿を見せる!隼は明らかに反応が遅れる。
二人は同時に叫んだ。
「あの夏の日の甘い思い出!」
「ギャラクシーデンジャラススウィート!」
「「名前違うじゃん!!」」
発生しかかっていた力は急速にしぼんだ。
こてんじじゅうきえ
「“弧天慈充帰慧=h」
「お前普通は夏の日だろっ……」
「絶対お前のセンスは間違って……」
消滅した。
「…ら、ラッキー、なのか…?」
「子供相手に二人がかりなんて…」
「何を!正義の味方ぢゃん、お前」
「そうそう。いいこと言うね、Inferno」
武は相手のその言葉に情に訴える作戦を止めることにした。よく考えてみると子ども扱いされるのもいやだったということもある。
武は自分の手ある武器を見つめた。
こほう
パンチンググローブ型の言具、名前は“虎崩”というらしい。
「…あんな武器情報ないよな、風影蓮」
「ないね、Inferno」
二人の様子を見て、武は二人が少しビビッていると推測し(実際少しビビッていたのだが)これみよがしに構え、つぶやいてみせる。
「…ふぅん、一撃でビルひとつ壊せそうだね」
明らかに二人の表情は硬化した。しめたとばかりに武はその一瞬の虚をついてつっこむ!
二人のうち、Infernoと呼ばれていたほうを狙った一撃は、空を切って地面を爆砕する。
「…マジ、で、ビル壊せそうだね、蓮くん」
「そうだね、Infernoくん」
棒読みの日本語が背後から聞こえる。武は振り向きざま拳を回し、
それは剣と、ヨーヨーで止められていた。
「…パタ…!」
「ご名答。よく知ってるね」
Infernoという男の腕についたガントレットから伸びる両刃剣をみて、武はそうつぶやいた。
頭を引っ込める武に続き、ヨーヨーがその空間を通過していった。
「おしいっ!」
いったん下がった武の脳裏に浮かんだ単語。
再びの特攻。Infernoと風影蓮はあからさまに馬鹿にした表情になる。
「あたらなきゃ意味ないんだよ!」
「そこんとこわかってるの?君」
「“動くな”」
「「あ」」
見事に固まる二人に、武は言具に言霊を乗せ、放つ。
そうそうそう
「“虎崩、双葬送=h」
二人は固まったまま爆散した。
「“鳳凰断裁=h!」
「行くぞ!彼方!」
「任せろ、JOKER!」
「「秘儀、阿吽の鋼壁!」」
鳳凰断裁は二人のブーメランによって作り出された謎のエネルギー体によって防がれる。
「…言霊、じゃ、ない…?」
卓弥のつぶやきは襲い掛かるブーメランによってかき消される。
ブーメランが交差する点をかわすも、衝撃波で体に傷がつく。
「いまならっ!」
無防備の二人を叩きに、卓弥は突進!
「甘い!」
「隙だらけだ!」
「「秘儀、直角後退回転!」」
卓弥に向かって、いきなりブーメランが回転を変えてつっこむ!
「!!」
「これで終わりだ!」
「逝け!!」
そのブーメランは卓弥の体を背中からくだかなかった。
「“鋼羽破縛=h」
卓弥は空中で羽根を使い急降下しかわす。ブーメランは、卓弥が邪魔で軌道が見えていなかった持ち主に帰る。
「はぐ!」
「ぐべ!」
卓弥で軌道が見えていなかったためキャッチは出来なかったようだ。
「“炎鳥絶波=h!」
炎の衝撃波が二人を消滅させた。
「うふわはははははは!!!」
「何!何なのよ!」
「ちょっとりりあさん、落ち着いてください!」
夏葉は、どこから出しているのか包丁を乱射する女と、それをなだめる女から必死に逃げていた。
「せん、今いいとこなんだから邪魔しない!」
「こっちにとんできてるんですよっ!」
瓦礫の陰に隠れ、夏葉は言具を見る。
あられこもん
クナイだった。氷で出来た。名前は“霰小紋”。2本のクナイを握り締める。
意を決して、瓦礫から飛び出す夏葉。もちろん包丁の散弾の標的になる。
左手のクナイで包丁を弾きつつ、右手のクナイを投擲!りりあの眉間へと向かう!
そのクナイは、しかし、せんの両手に挟み込まれ、止められていた。
夏葉はもう片方のクナイを握り締め、咄嗟に頭に浮かんだ言葉、恐らく言具の技の言霊を叫ぶ。
むひょうせんじん
「“霰小紋、霧氷千塵=h!」
左手のクナイが消えた。と思ったら、せんの手の中のクナイも消えた。りりあがせんを抱えて横に飛ぶ。
刹那、何かがそこにあったものを細切れに変えた。クナイが細かく砕け、その氷が極小の刃と化したのだ。
言具がない夏葉に向かって、りりあが突進。力なら勝てるという自信が満ち溢れた笑顔。
だが、その右ストレートは夏葉に受け止められる。カウンターで放たれていた夏葉の右拳もりりあが受け止め、力の競り合いになる。
「…あんた…やる…じゃない!」
「…負けて、られない…の!“霧氷千塵=h!」
「!」
手を組んだままで逃げられないりりあを、
せんがかばった。しかし、その表面をまるで不可視の物体が覆っているかのように、霧氷千塵は止められていた。
せんはりりあを抱えて後方に逃れる。
「やるじゃん、せん」
「これくらいなら…」
「じゃぁ特攻して」
「ぇ…ぇええええええ!?」
りりあに投擲されたせんは、一直線に夏葉に向かう。夏葉は突然のことに驚き、しかし落ち着いてクナイを構える。
せんは決死の表情で、恐らく先程の不可視のバリアを前面に集中させる。
勝敗は、角度だった。
夏葉はせんを紙一重でかわし、片方のクナイを投擲、空中でせんを投擲したばかりのりりあの体を貫く。
「なっ…そんな…」
そして斜めに打ち出されていたせんは地面に突き刺さる。バリアのおかげで即死はしなかったものの、埋まって身動きが出来ない。
そこを夏葉に霧氷千塵で攻撃されたものだから、塵になるしかなかった。
りりあは着地して、クナイは心臓に突き刺さっていたが、まだ生きていた。
のろいのように最後の台詞を吐き出す。
「…作者ぁ、覚悟…せぃ…ゃ…」
「え〜〜、ページの都合と面倒くさいのとで瞬殺でいい?二人とも」
「拒否」
「ヤダ」
ほわいとすたあと、タイムマシンとレインのタッグが交戦していた。
がいあ
ほわいとすたあの手には言具の餓威亞が、タイムマシンの手にはトンファーが、レインの手には鋼線がそれぞれ握られていた。
「今日こそ普段の(リアルでの)恨みを晴らさせてもらう!」
トンファーが回転し、
「そして僕たちにひざまずけぇ!」
鋼線がきらめく。
「…ばかいうな。腐っても…」
ほわいとすたあの姿が消える。
「鯛、っていうだろ?」
トンファーは砕かれ、鋼線は分断されていた。驚愕で二人の声が重なる。
「「作者せこい!」」
そして二人は餓威亞の錆になった。
「ふぅ、あっけな…!」
ほわいとすたあが跳んだところに突き刺さる拳。地面は、武のそれよりも大きく爆砕する。
「…うわぁ、一番やりたくない相手…」
ほわいとすたあのつぶやきと同時に、放たれた拳を日本刀が受け止めていた。
「…さて、作者さん、一度戦ってみたかったのよねぇ」
邪悪な笑みを浮かべる夢宮さんご。ほわいとすたあは明らかに引け腰な愛想笑いを浮かべる。
「…こっちは戦いたくなかったんですけどね…」
打撃音と金属音が響く。
「何!ロードがやられた!」
「しかしロードは登場時のあの台詞だけですか。可愛そうですね」
「…ってまだ生きてるよ!勝手に殺すな!」
龍哉は少なからず困惑し、そして精神的に疲労していた。
相手の攻撃のせいではない。相手の会話ややり取りを聞いて、だ。
「ヒロキ!何勝手に人を殺してるんだよ!」
「いや、普通の人間だったらあの青竜疾駆とやらをまともに受けたらまず死ぬでしょう」
「そう。私もそう思った」
「俺は普通じゃないっていいたいのかよ!」
「いや、誰もそうとは…」
「論理的にはそうですね」
「NaHCO3!私のことも考えて!」
「よーしわかった!お前らから先に殺る!」
「ほう、できるとでも…?」
「……ぅ」
「そろそろいいか?」
龍哉の言葉にようやく3人の会話は止まる。
本当ならさっきの会話中に倒してしまうほうがよかったのだが、どうもそうゆう気にはなれなかったのだ。
「…いいか!あいつ倒したら次お前だからな!」
「逆にホルマリン漬けにされても恨まないことですね」
「…はぁ…」
ロードは短剣を、NaHCO3はメスを、ヒロキは銃を取り出す。
3人と龍哉の間に緊張の線が走る。その線を切ったのは、暴風雨。
「オラオラオラオラオラオラオラ!!!!!」
「むぅーだ無駄無駄無駄無駄!!!!!」
横からやってきた暴風雨のようなほわいとすたあと夢宮さんごに、ロードが巻き込まれる。
「「「あ」」」
龍哉と、NaHCO3と、ヒロキの声が重なったときには、ロードは消滅していた。
その最後の台詞が「俺こんなんばっか」だったのはあえて聞かなかったことにしよう。
「…消えちゃった…」
「これで一応彼も普通って事ですね」
「そうみたいですねぇ」
「せっかくの検体が…」
「…………」
「“三十月蓮華=h」
「「あ゛」」
今度は隙を逃さず、龍哉の偃月刀によって二人は消滅した。
と、ほわいとすたあとさんごの向かった先で爆発が起こった。
龍哉が見上げると、ふたつの影が飛んでいき、同時に消滅した。
ため息をつく龍哉。
あたりを見回すと、それ以外の4人は無事なようで、龍哉のほうへと駆け寄ってきた。
「…なんだったんだ、この14人は…」
龍哉の問いかけに答える人間はいなかった。
「とにかく、終わったんだから、かえろうぜ?」
卓弥が双雛で肩を叩きながら言う。
全員同意し、そこから去っていく。
「…あ、そういえばほわいとすたあさんは?」
武の言葉に全員立ち止まり、しばらく見つめあい、
「「「「「…ま、いいか」」」」」
そして彼らはいつものように、破壊した市街地をのこし、去っていった。
続く
続かない