かざした手、その指の隙間から零れ落ちる太陽の光に目を細めていた。

空に浮かび燃え続けているその球体を、しかし直接見ることはできないまま、空を見上げていた。

雲がないから、空の色は青。その青い空に縁取られて、けれど雪のように白く細い手は輪郭を見失いそうで。

どれくらいそうしていただろう。たった今気がついたかのように、小さく細めた目線をおろし、目の前にある雑踏を見る。

中央広場のベンチに座っているのは、何もレノだけではない。けれど、背もたれに身を預けて空を見上げている人ははそうそう見つからない。

レノは唯一他の人たちとの共通項であるものを探すために自分の体に目を向ける。

太陽に温められた空気の中で、何故か着ている厚手のコート。しばらく日に当たっていたせいか、体がなんだか蒸し暑い。額にむずがゆさを感じて手を当てると、手袋をつけていないほうであったその手の甲には水滴がついていた。

この陽気の中での厚着では流石に汗をかくなというほうが無理だが、それでもこの服を着ているのは、単に薄着の持ち合わせが殆どないためであったり、何となく着心地のいい、着慣れしている服装であるためだ。恐らく他の街の人もそうだろう。

広場から見える光景を探ると、街中に白が点在している。

それは殆どが動くもの、つまり白いコートを身に着けた街の人たちであった。時折コートを脱いでいる人も見かけるが、肌の白さが今の街の外観からするとことさらに目立つ。

それ以外の白が見つからないことに、レノは落胆が多少混じった感慨を感じた。

夏が始まって、そして終わったのは2週間前。たった2週間しか続かない夏と、そのあとの短い秋。今はもう、暦の上では長い長い冬に入っているはずの頃。

屋根の上や道の上に、白は全く見当たらない。夏の太陽が持っていってしまったかのように。

それでもこの街の呼び名は変わらず、街の入り口の門に書かれている文字は声高に自らの存在意義を主張していた。

『常白の街、コルナベルト』



   30000HIT記念リク:「雪降る街」



例えば毎朝の朝食の仕度がなくなったかのような。

例えば毎日の厳しい仕事がなくなったかのような。

なければ楽なのに、それらは実際になくなってみると、生活に大きな穴を開けるようなものだと気付く。

コルナベルトに毎年訪れる春、夏、秋は、それらを常に気付かせてくれる定例行事。

1週間ずつの春と秋、そして2週間の夏という、合計で1ヶ月の冬でない季節。空をも覆う白を裂いた青と黄色が、やがて街にかかったテーブルクロスをはぐように。

そうしてだんだんと積もった雪の消え去る頃に、夏が終わり、屋根が見え始めたところで秋が終わる。

後は冬が単独で、最も長い距離を走り続けている。

なければ楽なのに、実際になくなってみると味気ないもの。

コルナベルトに降り積もる雪も、その一つであった。

レノがそれに初めて気付いたのは、2階にある自分の部屋の窓から、そこに地面があるかのように1階を覆い隠して存在する雪を、毎朝見ることができなくなってからだ。

今朝もまた、暖かいのに3段重ねのままの毛布を剥ぎ取って、夢の中にいるのかと呆然とする。

「ご飯よー」という母親の言葉に自分を取り戻してみれば、昨日一昨日と同様に10分の時間を浪費していたことに気付いた。

廊下に出る。普段のひんやりとした空気がないのがなんだが物足りない。

吐く息も白くないことがなんだか気分が悪く、レノは視線をさまよわせる。視界の端とリンクする廊下の端に、何か動くものを捉えるのにそれほど労力は使わなかった。

1階へと向かう道とは逆のほうで動く青いツンツンの髪。レノは声をかけた。

「何やってんのクレイ」

廊下の突き当たりの扉とにらめっこをしていた少年は一瞬身をすくめ、しかしすぐに安堵と不機嫌の混じった表情でレノを一瞥する。

「なんだ姉ちゃんか、驚かすなよ」

「なんだとは何よー。ていうかクレイ。もしかして2階から落ちて自殺する気だった?」

「まさか、姉ちゃんじゃあるまいし。寝ぼけてるならこっちにこないほうがいいよ。間違ってこっちの玄関から出ようもんなら―――雪の地面につながってない今だと、死ぬまではいかなくても結構簡単に大怪我できるから」

鼻で笑うと、クレイはその扉を後にする。廊下の真ん中で立ち止まっているレノを追い越し、繰り返し続く「ご飯よー」という声に元気よくこたえて階段を下りる音が聞こえた。こういうときだけはクレイは分相応に子供だ。

それ以外では、特に自分に対して最近ますます生意気になっている弟を見送りながらも、レノの意識はやはり2階の玄関へと向かっていた。

コルナベルトの建物は、一番低くても2階建てなのが基本だ。それというのも、長い冬において、1階部分がすべて雪に覆われてしまうということはもはや当然ともいえるためだ。

そのため、コルナベルトの建物には玄関が最低2つある。1階のそれは1年に数度使われればいいほうで、大半は2階のものが使われる。冬に訪れた旅人が1階を見て、「これは立派な地下室ですね」というのを、レノは何度か聞いたことがある。

雪が積もるごとに高くなる地面を利用したコルナベルト特有の2階の玄関だが、その雪がない今では滑稽な壁の一部分としての役割しか果たしていない。あの旅人が今村を訪れたなら、「なんというか………奇妙な外装ですね」とか言うに違いない。

勿論、壁にいきなり扉だけがあるわけではない。だんだんと積もっていく雪に合わせて、簡単な階段もついているのだ。だが、大抵は登ってくるときにしか使われない。雪がクッションとなるため、飛び降りても危険ではないから。

当然そのクッションがない今は落ちると危険だが、父によって何重かに施錠されているから、その心配は殆どない。

しかし、やはり習慣というのは怖いものなのだ。これまでにレノは2度、クレイは5度落ちかけている。その事実も施錠につながった重要な要素だろう。

先程軽口で質問への答えをぼかしたクレイだが、その理由は、きっと今玄関の前に立っているレノと同じだ。

いつも使っているはずのものが使えない。その事実が、なんだかとても奇妙に感じて。

当然であったものが当然でなくなった、その感覚に、まだ慣れていないのだ。

表現できないような微妙な気持ち悪さ、納得がいかない気持ち。それらが自分をここに立たせているものなのだ、とレノは思う。かといって、ここに立っていても別に解消されるわけでもないのに。

再三の母の呼び出し。レノはがんじがらめの玄関に背を向ける。

再び来るはずの冬を待つ扉は、閉じられたままでレノを見送っている。



今朝の朝食はクリームシチューだった。主にキノコをメインの食材としている。

冬が長いコルナベルトではありきたり、かつ日常的な献立。とはいっても、寒い冬に、体を温めてくれる。そんなシチューが飽きられることはない。レノもクレイも、シチューは好物だった。

しかし、だ。

「母さぁん、野菜はないの?」

レノは少しの期待と、大きな不満を混ぜて母に問う。スプーンには、最初から数えて5個目のキノコがその身を漂わせている。

「ないわよ。この前ので買った分は終わっちゃったの。また次の行商人さんが来るまで待つしかないわね」

レノの向かいでパンにバターを塗っていた母は苦笑しながら言った。レノの眉が言葉が進むにつれて険しくなっているのを見ながら。

「しょーがねーじゃん。ホントなら今はもう冬だし。行商人の人たちも、この村には閉じ込められたくないんだろ」

レノの隣に座っているクレイが言う。全く、4つ下の弟の癖に生意気な。そんなことは5年前、9歳の頃に習ったってば。

弟への苛立ちは押さえ、しかしあきらめのつかないレノは愚痴をこぼす。

「でも今年はちょっと気象がおかしいんだから、もう少し多めに来たりとかしてくれればいいのに。この村相手だったらきっと儲かるのになぁ……」

「はは、相手のことを思いやるつもりで、自分が野菜を食べたいのが丸わかりだぞ」

穏やかな笑い声がレノの耳朶をふるわせる。レノが睨みつけると、父は大げさに肩をすくめて見せた。

「まぁ、異常気象だから、というのもあるんだろうな。大丈夫だと思ってきてみたら、閉じ込められてしまいました。なんてことにはなりたくないのだろう。おっと、ありがとう」

父は母からバターの塗られたパンを受け取る。それを一口かじり、咀嚼し飲み込んでから続ける。

「まぁ、レノの言いたいこともわからなくもない。野菜シチューはおいしいからな」

「なんだ、姉ちゃんキノコシチュー嫌いなのか。だったら俺が食ってやるよ」

言うが速いかスプーンを伸ばしてくるクレイの手を、弾いた中指で後退させる。

「嫌いじゃ、な、い!全く、油断もすきもない」

「ふふ、お代わりはあるから」

「ホント!?じゃお願い、母さん」

「あらあら」

器を突き出したクレイの顔には純粋な喜び。微笑みながら受け取り、席を立つ母。

レノは呆れたように溜息をついた。

「………全く、こんなときだけ10歳のガキなんだから」

「なんか言ったか姉ちゃん?」

「別に」

ははは、という父の笑い声に、レノは溜息をつくしかなかった。



朝食を終えて、クレイは玄関を飛び出した。学校が休みの今のうちに、普段できない遊びを満喫してくるということだった。

やはり10歳の子供である。これで姉に生意気な口をきかなければかわいい弟ではあるが。

居間でお茶をすすっていたレノは、珍しくわずらわしく感じるその熱さに少し眉を寄せながら、香りに鼻をくすぐられ、幸福な気分を味わっていた。

「あら、レノは出かけないの?」

クレイは出かけたのに、といった口調で母がきいてくる。

少しばかりむっとして、レノはわざとつっけんどんに答えた。

「別に。レノみたいに子供じゃないからね」

あらあら。母はほほえましいものを見たように微笑む。多分ものすごく正しい反応なのだろうが、その原因が自分の言動にあったことに気付く程度にレノは年を取っていた。

そのため先程の自分の子供っぽさを自覚してしまい、作り物ではなく、気分が落ち込む。

そんなことはお構いない母は、万年浮かべている微笑を少しだけ緩くして、

「レノは暇だけど、子供じゃないから出かけないのね。だったら、その暇な時間を借りて家のお掃除を頼んじゃおうかしら」

「あ、そうだった。トロンと会う約束があるんだった、あー忘れてたうっかり。それじゃ、出かけてくるから、そういうことでね」

レノは言うが速いか2階へと駆け上がる。お気に入りのフードつきのコートを、薄手のセーターの上に重ねて羽織る。念のため、とばかりに手袋とマフラーをコートのポケットに入れて。

2階についている玄関に向かいそうになった足に急制動をかけ、室内の階段を駆け下りる。居間のほうで、「お掃除を頼」の次あたりからレノの言葉に上書きされた母が、ややきょとんとした顔で立っている。が、レノを視界に留めたのだろう。微笑みを浮かべて、更に独白のように呟いた。

「ふふふ。まだレノもかわいいわね」

それが聞こえてしまったことは、自分の耳を恨むしかない。

おかげで玄関を飛び出した先でぶつかりそうになった、隣の家のホルン夫妻に驚かれる羽目となった。

思わずもれた溜息。もやもやした感情と恥ずかしさから所在無げにさまよい始めた目を、無理やりに空に向ける。

気分は最悪なのに、そこにあるのは曇りではなく青空。



手伝いがイヤだと逃げ出したとはいえ、言い訳にトロンと会う約束がある、ということを口走ってしまった以上、すぐに帰るわけにはいかない。とはいえ、特にすることもないというのが正直なところ。

レノは日課のように、中央広場のベンチに腰掛けて空を見上げているのだった。

流石に教訓となったのか、それともいい加減いらぬ心配をすることにつかれたのか。街中で見る白―――コートを着た人間は、日に日に減っているのが目に見えてわかる。恐らく長袖を切り取ったのだろう、半そでのシャツを着ている子供の姿もあった。肌に光る白色がまぶしい。

そんな街中の光景を見ていると、時期的には本来正しい服装をしているはずのレノが馬鹿らしく思えてくるのは一種の魔法のようだ、と思う。

青空をずっと眺めていたことで、家を飛び出したときに感じていたもやもやは綺麗さっぱり、とはいかないまでも、落ち着ける程度には解消された。のだが、事ここにいたって再燃の様相を色濃く見せている。

いい加減に自分に呆れてコートの胸のボタンに手を伸ばした丁度その時。

「あれ?レノ、コート脱いじゃうの?」

不意打ちを食らったレノは飛び上がらんばかりに―――体は大げさではなかったものの、少なくとも心は―――驚いて、声のしたほうに顔を向ける。

嘘から出たまこと、と東方から来たという旅人が言うのを聞いたことがあるが、正にそのシチュエーションが現状説明にふさわしい。斜め左前、レノを観察するように見下ろす二つの目の持ち主は、トロンという名前を持つ幼馴染の少年だった。

夏を必要以上に謳歌している今年のコルナベルトでは少数派となりつつある白いフードなしのコート、そこに絵の具をたらしたかのように見え隠れする緑の髪を、薄いねずみ色のベレー帽が隠している。14歳という年齢にふさわしい、というのは大人の評だが、あどけない表情に髪とおそろいのダークグリーンの瞳。レノ個人としてはこどもっぽ過ぎると思えて好きではない顔つきであるが、物語の挿絵として描かれていた深い湖のような瞳は好きだという二律背反。つまりはレノとトロンは幼馴染なのであった。

「これでまた一人コート人口が減っちゃうのか。結構残念かもね」

口ぶりとは正反対に笑ってみせるトロン。レノは唇を突き出してそんなトロンに食って掛かる。

「何時から見てたの?」

「ええと、さっき通りがかったらレノがベンチに座ってたから」

「それってどのぐらい前?」

トロンはあごに手を当てて、

「………10分ぐらい前、かな?」

「変態」

レノは容赦なく言い放った。

見に覚えのないことを言われた、と不思議そうな顔を見せたトロンだが、レノは矢継ぎ早に、

「だってそうでしょ?声もかけないでただ見てるだけ、別に声をかけてもよかったはずなのにかけなかったんだし、もしかしたらわたしがコートを脱ぐまで待ってたかもしれないんだし。これはもう完全に変質者よ。この視姦者」

言葉の散弾を体中に浴びたトロンは碧眼を二回ほど瞬かせて、

「………そうかもしれないね。でも視姦者ってどういう意味?」

今度はレノが呆然とする番だった。

「………知らないんだったら辞書で調べなさいよ」

「そっか。レノは頭いいね〜」

快活に笑うトロン。確かにレノは学校ではそれなりにいい成績を維持しているが―――ってそういうことではなく。

レノは内心で溜息をついた。トロンは子供の頃からあまり変わっていない。今だって、もしかして両親に聞いたら、とか言っていたら、本当に両親に聞いたかもしれない。その様子を想像して、再び、溜息。

「ね、ちょっと聞いてもいい?」

トロンが言う。いつの間にか左隣に座られていた。

先程より距離が近接したことで、トロンの顔が一気に近づいたかのような錯覚。顔を向けたレノは、不自然でない程度にゆっくりと体を逸らす。

「聞くって、何を?」

「いっつもここで空を見てる理由」

まるで面白いものでも見つけたかのようにトロンはからからと笑う。その顔が空を見上げていたので、体を多少トロンから離すことができた。やはり、あまり近いというのも考え物だ。そりゃ少し前までは気にもしなかったけれど、今はもうそれなりに大人なのだから。

「理由、って…………別にないわよ、そんなの」

「ホントに?」

碧眼がレノを向く。またも不意打ちで目が合ってしまったレノは、行き場がなくなった目が挙動不審な動きを見せるよりも早く、青空を見ることにした。

「ホントに」

空を見ていると落ち着くから、ではない。

普段見ることができないから目に焼き付けるように、ではない。

行き場がない視線を向けられるから、では………大概の場合は、ない。

ただ、何となく見上げてしまう。そこには理由なんてない気がする。

ふと自分が恥ずかしいことを考えていることに気付いて、顔が赤くなるのを感じた。

あわててトロンを見ると、トロンも空の魔力に導かれたのか、ずっと天を見上げていた。そのことに少しだけホッとし、ホッとした自分がいることに、また正体不明の苛立ちとか恥ずかしさを感じた。

こんがらがってきた思考。もともとレノは考えることは好きではない。まぁ、考える能力があるかないかは別として。

いろいろな想いを振り切るかのように、レノはベンチから立ち上がる。

「どうしたの?」

という若干の驚きを含んだ声は、当然トロンのものだ。

レノは、そういえば朝から一度も見せていなかった、笑顔を浮かべて言った。

「どうせあんたは暇でしょ?だったらどっかに散歩行かない?」

何気なく、さりげなくトロンを誘う。別にトロンと偶然出くわしたのだから、その後のことも嘘から出たまことにするつもりでは、多分、ない。

瞬きを正確に2回連続させるトロン。そうして、唇をほころばせる。

「別にいいよ。どうせ暇だし。それに、レノは数少ないコート人口の一員なんだしね」

笑いながら、トロンはベンチを立ってレノの横に並ぶ。

最後のは冗談だったのだろうが、レノのそれなりにたくましい想像力は、周囲の視線とその思考をイメージしてしまった。

そうして行き着く。周りから見れば、自分たちはペアルックに近い状況にある、という事実に。

「?レノ、どうかしたの?」

「べ、別に。さ、行きましょ」

トロンに先立ってレノは歩き出す。「あ、待ってよ」とトロンは小走りになっているが知ったことか。赤い顔なんて、なんかトロンには見せたくない。なんでって………幼馴染に余計な詮索をさせる材料を与えたくはないから。そう、それだ。

強制的に自分を納得させ、レノは、さてどこに行こうか、と歩きながら考える。

「あのぅ〜〜」

声をかけられたのは、そんなときだった。

足を止めると、自分のすぐ右横に白いコートを着た少女がいた。ポケットも何もなく、前が開くようになっていないそれは、コートというよりは厚手のマントのようだったが。

「あのぅ………」

少女の目はまっすぐ前、レノに注がれていた。あまり見たことのない、珍しい赤色の眼。再度呼び止められたこともあったので、恐らく声をかけられているのはレノで間違いないのだろう。

後ろから追いついて来たトロンも不思議そうな顔をしている。知り合いかと少しだけ思ったのだが、違ったようだ。

そうして少女への返答を先延ばしにしていると、見る見る少女の目が潤み始めた。何も悪いことはしていない、と思う、のだけれど、何故かいたたまれない。というか泣かれるのは好きじゃない。って、泣かれるのが好きな人なんていない、よね?

「えっと………わたしでいいの?」

レノはしゃがんで少女と目線の高さを合わせる。小学部の生徒なのだろうか。少なくとも10歳前後だろう。

泣きそうになっていた少女は、レノがしゃがんだことに一瞬身構え、けれどすぐにそれを解く。けれど、まだ緊張しているのが伝わってくる。それは初めての人に話しかけるのだから当然だろう。

「えと、です。はじめましてなので、おねがいする、というのも、おかしい、のですが………」

切れ切れに呟く少女。後半はもごもご呟いた感じだったのでよく聞き取れなかった。

「えっと………わたしに、お願い事?」

それでも、レノは少女の意図を読み取って、話しやすくなるように会話を進めた。

レノの言葉が後押しをしたのか、少女は意を決した様子で、精一杯の声量で、レノに言った。

「………お薬やさんの場所を、教えて欲しいのです」












〜あとがき〜
トンデモネェ踏み倒し期間でした、本当にスイマセンでした。
それもこれも全部私+学校の所為です。え?比率?そんなの3:7に決まってるじゃないですか。
当然学校が7ですが(何
そんな感じで反省が見えない私ですが、いや反省はできるときがシアワセなのですよ(意味不
で、お詫びにもならない報告ですが、なんか2〜3話分になりそうな気配です。
ま、付き合ってやってください。




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