第一話「日常×非日常」
―市立港第二中学校―
俺は憂鬱だ。なぜなら担任にキレられたからだ。
自分のイライラを遅刻してきた生徒に当たるのもどうかと思うが。
そう思っていると、一時限目が終わっていた。
目の前にやかましいやつが来た。
うつ
「お〜〜い、万年遅刻常習犯にして第一級鬱病患者〜〜、元気か〜〜?」
「うざい、死ね、この馬鹿卓弥」
俺がこういってやると、卓也のやつは笑いながら「おっし、元気そうだ」と抜かしてきやがった。
はんばしたくや
こいつ―磐橋卓弥―は俺の回りにちょくちょくやってくる、ある意味おじゃま虫的存在だった。
いつもうるさく、明るく、クラスの奴等からも好かれていて、世話焼きで、俺に声をかけてくれた数少ない人の一人で、うっとうしく、――いいやつだ。
「んで?今日の遅刻の原因は何だ?無気力龍哉くんよ」
いまさらだが、おれの名前は深月龍哉という。まぁどうでもいいが。
「うるさい。交通事故に巻き込まれそうになってたんだ」
まぁいいわけだが。本当でもあるんだからいいだろう。
「ふぅん、ま、信じといてやるよ」
信じてなさそうだな。
「お、そろそろ二時限目か。じゃあお互いに一日を耐え抜くとしようか。」
「お前に言われなくてもそのつもりだ。」
「このあとお前の苦手な数学・理科の3連でもか?」
くっ!コイツ、やなことを・・・。しかもにやけながら・・・。
「フン、お前に言われなくてもわかってる」
卓弥は、「ふーん、・・・ま、がんばれや」といいながら、自分の席に戻っていく。すぐにいつもの奴等が卓弥の下に集まっていく。
・・・こうしていると、俺がそこそこ社交的な人間に見えるが、それは卓弥ほか数人の前だけでのことだ。
基本的に、話しかけてこない奴とは話さないし、そのせいでそいつらからは「付き合いづらい」「暗すぎ」とか言われるんだが。
数学の岸田が入ってきた。・・・俺の憂鬱さがピークに達しようとしていた。
―放課後 帰り道―
やっと一日から解放された。授業が終わったあと、担任の谷口から遅刻の件で呼び出されたので、
帰るときには5時半を回っていた。
フツー、受験を控えてる中三生をこんな時間まで残すか?親から電話が来るだろう。
・・・俺の場合はないが。
11月の秋の風が冷える。
「あなたが深月龍哉君ね?」
振り向くと女が立っていた。うちの制服だ。だが俺には面識はない。俺が基本的に社交的でないから、当然だが。
「・・・・・・・」
「沈黙は肯定ととるわよ」
俺はかまわず歩き出す。
「!・・待ちなさい!“深月龍哉、止まれ”!」
とたんに体が硬直する!これは・・
「・・・お前・・」
「知ってるでしょう?あなたも使えるんだから。」
俺は女を見据える。茶色がかった髪を肩まで伸ばしている。夕焼けのせいで、顔はあまり見えなかった。
コイツも俺と同じ、あの力を持っているようだ。朝、トラックを止めた、“言葉”の力を。
「いつから・・・・・いや、朝か」
「!・・よくわかったわね。」
当然だ。これまでにもこの力を使うことはあった。だが、そのときにはこなかったのだ。
となると、朝のアレで気付かれたと考えるべきだ。
「まぁ、いいわ。・・悪いけど、おとなしくついて来てくれる?」
馬鹿かコイツは?
「・・・いやだ、といったら?」
女は、一瞬呆気にとられたが、すぐに表情を引き締める。
「あなた今の状況わかってるの?・・抵抗するなら無理にでも・・・・!?」
女が飛び、俺を後ろに突き飛ばす。
刹那、一瞬前まで俺がいたところに、人間ほどの物体(猿だろうか?しかし大きい)が、つめを地面に突き立てていた。
女を捜すと・・・俺の近くに倒れていた。血を流している。
どーなってるんだ?この状況は?
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