第七話「半強制的修行後編」




「・・・ってわけ。わかった?」

「一言いいか?お前もっとかいつまんで話すということを学べ」

何で俺が愚痴を言ってるかというと、こいつの話が無駄に長いからだ。

午前中の残りの時間を使い、俺はとりあえず言霊についての基本的な知識を学ぶことにした。

・・・が、肝心の夏葉の話が妙に長く、10時半から始めたのに、時計は1時を指していた。

「そうだよ、ねぇちゃんの話し方は要点がまとまってないって父さんも言ってただろ」

うおわっ!

・・・いつの間にかタケルが隣にいた。何とか動揺を顔に出さずにすんだが、いつ入ってきたんだ?

「うるさいなー。武生意気」

なんか険悪ムード。姉弟喧嘩が始まりそうなので、とりあえず止めることにする。

「二人とも落ち着け。何とかわかったから、昼飯にしよう」

といった途端に二人の腹がなる。そして二人とも恥ずかしそうにリビングに向かった。




昼飯を食べながら俺は夏葉の話を整理する。

まず言霊の起源。これは人が文明を生み出したときに、同時に発生したものらしい。

当時はみなが使えたらしいが、近代に近づき科学を手に入れるようになってから、だんだんと力が失われていったらしい。今では全人口の1パーセントにもみたないようだ。

と、いってもいま世界の人口は約60億だから、結構いるとも言えるが。

んで、その力を持ってる人々は団結して世界規模の協会を作り、国連の裏機関として言霊の管理や言霊師の管理、言禍霊の始末などをしているらしい。

この事務所などはその協会に登録している。協会に登録さえしていれば個別に事務所をもつことも許可されているらしい(というよりそうだと信じたい。沙理奈なら法律違反とかしそうだから)。

あとは全部夏葉の余計なつけたしだ。言霊によって世界がこうなったとか、キリストは実は言霊師だったとか、第二次世界大戦でも協会がこうゆう風に働いたとか。

無駄知識なら某番組で披露してくれ。ここは「ト○○アの○」ではない。

そんなことを考えてるうちに、昼食が終わった。午後からは武も含めての使い方講習だ。




「・・・なぁ、ホントにちゃんと言わなきゃだめなのか?」

「何言ってるのよ。さっき説明したでしょ」

「だってお前の説明は・・・・」

ゴスッ!「う゛っ」

・・・夏葉の野郎、いきなり蹴りとは・・・

「ねぇちゃん、落ち着けって!俺がわかりやすく説明しますよ、龍哉さん」

そして武は姉の回し蹴りをしゃがんでよける。さすがに姉弟だ。

「まあ言霊っていうのは、つまりは人がもともと持ってる力を発現するための仲介なんですよ。つまりは水を出すための蛇口のような働きです」

武はわかりやすい。夏葉はここまで言うのに30分かかった。当の本人はムスッたれている。

「それで、何で言葉を多く言わなきゃならないかって言うと、さっき言った蛇口で考えてください。蛇口が多いほうが、力を発現する効率がいい。逆に少ないと、効率が悪いうえ、無理に使うために消耗が激しい。昨日先輩が10っ回程度でばてたのはこのためです。OKっすか?」

少なくとも夏葉よりは確実に。だが、そうすると・・・・・

「やっぱり省略はだめってことか」

「そうです。諦めてください」

俺はため息をつき、仕方ないのでさっきからやってたことを再開する。

「・・じゅ、術者、み、深月、龍哉が・・命ずる・・。紙よ、う、・・浮け」

俺の目の前の紙が少し浮いて、そしてまた落ちる。

「まだ恥じらいが残ってるのよ!!そんなんじゃこれから大変よ」

夏葉の怒声。さっきもこれでもめていたのだ。

・・・・・フツーに、恥ずかしいと思う。人前でこんな硬い言葉使うのは。

「・・・省略しちゃだめなのか?」

「「諦めることね(てください)」」

見事に姉弟の声がそろう。俺はまたため息をついた。

時刻は5時。11月だともうあたりは暗い。そういえば昨日家に帰っていないことを思い出した。

「・・・・俺は今日はそろそろ家に帰り」

「あんたたち、仕事よ〜〜!」

悪魔の声が響いた。

「ランクが低いやつだから、新人も連れてって。よろしくね、夏葉、武〜〜」

・・・・・・・・はぁ

また泊まることになりそうだ。




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