第八話「初実戦」




俺たちは夕方の街を走っていた。

言禍霊が出たらしい。沙理奈がランクは低いって言ってたから、あまり心配は要らないと思うが。

それにしても、気になるのは別のことだ。

「・・・・おい、武器がこれで平気なのか?」

不思議そうに振り返る夏葉。ついでに武は――おそらく昔考えたことがあるのだろう――苦笑いしていた。

俺が言っている武器というのはエアガンのことだ。仕事だって言われたとき、夏葉と武はすぐにロッカーからエアガンを取り出した。

俺も沙理奈に「もってっとかないと、苦労するから」ということで、市販のエアガンを持たされた。

「大丈夫よ。」

「確か言禍霊には言霊しか効かないんじゃないのか?」

俺は仕入れたての知識を使う。そういえば普段はどうやって言禍霊を倒しているのだろう。

「・・まあ見てればわかるって」

夏葉が笑う。結構人になれやすい性格のようだ。俺と違って。

俺はいまだに(鈴音姉弟はそうでもないが)あの事務所の連中が信用できない。

沙理奈は論外、津田隼はあの後しゃべってもいないから当然、杉村拓実は優しそうだったが、今日も事務所にいなかったし、なんとなく信用できない。

とか考えてると、武が話し出す。

「隼さんは今日は来るのかな」

「それはないでしょ。下級ランクなら私たちだけで十分だし」

「そっか。・・・・・あれみたいだね」

話をしているうちに現場に着いた。

いかにも怪しそうな廃ビル。確か2ヶ月前に事故があって、それ以来建設が中止されていたはずだ。

沙理奈はここにいるといっていたが、移動の心配はないのだろうか。

そう思っていると、いつの間にか精神を集中させていた夏葉がしゃべりだす。

「ビンゴね。まだ言霊の反応を感じるわ」

というわけで、俺たちは廃ビルの中へと入っていった。



中は意外と広かった。どうやら中央に吹き抜けのあるデパートをつくっていたようだ。

辺りを見回す―――が、怪しい気配などはない。

それより、ひとつ気になってたことがあった。

行きがけに沙理奈に言われたこと。

 滅びの言霊は使うんじゃないわよ

滅びの言霊――昨日いった、あの「滅びよ」って言う言霊のことか?

あれを使わないで、どうやって言禍霊を倒せって言うんだ?

・・・というか、いま思い返すと、あの時人前にもかかわらず、真面目に硬い言葉使っていた。

昼間俺が言ってたことって、実は矛盾してたんじゃないか?

「武ッ!うえっっ!!」

夏葉の叫びに俺が現実に戻る。隣ではもう武が動いていた。

武が上に撃ったBB弾は、何者かにはじかれた。

武が横に飛ぶ、と同時に地面にそれ≠ェつきささるっ!

今度の言禍霊はカラスのような姿をしていた。例によって、巨大な。

「いくわよっ!タケルっ!龍哉を守りながら攻撃!」

「了解っ!」

二人の声が重なる。

「「術者、鈴音夏葉(武)が命ずる。汝、敵を貫く尖弾となれ」」

そしてすでに頭上へと舞い上がった敵へとBB弾を撃ちまくる。

またはじかれる、と思われた銃弾は、しかし敵の体へと突き刺さった。

苦鳴をあげ落ちてくるカラス、それに武の二丁銃が、夏葉のマシンガンが、散弾の嵐を浴びせる。

そして落下する。寸前に横へと逃れた俺たちは、ほこりが舞うビル内で目を凝らしていた。

夏葉が安堵の表情を浮かべる。こっちを見て笑ったとたんに、俺は見てしまった。

夏葉の背中に、カラスの鋭い爪が走るのを。

「ねえちゃ・・!!!」




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