第二十話「天国と地獄」




「逝ってらっしゃ〜〜い、龍哉〜〜。うかってたら油揚げよろしく〜〜♪」

「・・・・・・」

俺は憂鬱だ。

理由は今日が合格発表だからだ。

・・・・・・・・・・・・・・・ヤバイやばいヤバイ!!

心臓がバクバクいってる。

港来高校に行く途中で、夏葉と会った。

夏葉のほうが話しかけてきたような気もするが、あまり覚えていない。

そして今は港来高校の掲示板の前にいる。

ふと目をあげると、卓弥がいた気がした。緊張のあまり幻覚を見ているんだ。

俺よりも頭のいい(認めたくないが)卓弥は、たぶん港市立川橋高校を受けてるはずだ。

此処にいるはずがない。

朦朧とした意識でそう思いつつ、俺の番号を探した。

俺はなぜか最悪の444番。よって400番台を探す。

近くで夏葉が友達と一緒に喜んでいるのが見えた、ような気がする。

・・・・・383、384、392、401・・・・・

余談だが、今回の受験者は、定員320人に対して1200人ほどだそうだ。

・・・・423、427、431・・・

ドクン、ドクン、ドクン

心臓が高鳴っているのがわかる。

その先を見るのが怖い。

・・・・・・・439、440・・・・

ドクン、ドクン、ドクン、ドクン、ドクン、ドクン




・・・・・443、445・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

終わった・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は、ははは

「おぅーーい、龍哉〜〜〜〜」

この声は卓弥だ。はは、ショックで幻聴まで聞こえてきた。

「お前何番だ?444番?まーーた不吉な番号だな」

幻覚が俺の受験票をのぞいている。いや、本物だ。

「・・・・・・なんで、お前が此処にいるんだ?」

「ん、そりゃあ、あれだ。ここを受けたからだよ」

「・・・・・・・・・・は?」

「意外か?・・・別に俺の勝手だからなぁ、どこ受けるのも。もち、受かったぜぇ〜〜〜☆」

俺はもうつっこむ気力もなかった。

「そりゃそうと、合格おめでとうな、龍哉」

・・・・・・・・・・・・は?

「どうゆう・・・・イミだ?」

「そのまんまの意味」

俺は卓弥を殴りたくなった。嫌味を言ってるのだろうか。

「・・・・お前、まさかここだけ見てへこんでるクチか?」

と、卓弥は俺を端のほうへ連れて行く。

そこには1000番台の合格者が並んでいた。

「ほれ、あれ見てみろ」

俺はもうどうでも良くなって言われるがままに見た。

・・・・・・・・・・1223、1245、444

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!???

まて、まてまて、まてまてまて!!

俺の番号!!???

しかもマジックで付け足されてる。

とっさに近くにいた高校の先生に尋ねる。

「すいません・・・」

「ん、なんだい?」

「あの444番ってゆうのは、合格者なんですよね?」

「・・・・あ、ああ、そうだけど?」

なぜかちょっとあわてていたが、その答えで俺には十分だった。

・・・・はぁ。

よかった。

内心安心してるおれに、卓弥も「ほら、言った通りだったろ?」と声をかけてくる。

「龍哉〜〜、どうだった?」

夏葉もやってくる。俺は少し笑いながらうなずいた。

「・・・ま、当たり前よね。私が特訓してあげたんだから」

そういいつつも、夏葉もうれしそうにしていた、と思う。

「あ、お〜〜い、夏、龍哉〜〜」

隼がやって来た。

「隼さん!!私も龍哉も合格しましたよ!!」

隼は笑いながら、「そうか、まあそれでこそ俺の後輩たちだ」という。

そして、思い出したように紙を取り出す。

「これ、合格者へのアンケートみたいなもんなんだけど。二人も書いてくれ」

受け取りつつ卓弥をみると、「おれもやった」といってくる。

少し疑問に思ったが、合格したんだからちょっとのことぐらい気にしなくてもいいか。

と、一番上に名前を書く。

「・・・・これって・・・」

夏葉が何かに気付いたように言うが、俺はもう名前を書き終わり、そして隼がその紙を奪っていた。

「よっし!!部員2人目ゲット!!」

・・・・・・・・・・・・は?

「やりましたね!!先輩!!」

え?卓弥?

隣では夏葉が名前を書かずに紙を返していた。隼は少し残念がっていた。

「・・・・・・・どうゆうコ―――」

「こうゆうコト☆」

と、隼がアンケート用紙をめくる。そこには、カーボン紙と、部活入部希望書が。

- 『総合格闘技研究部』に、私 深月龍哉 は入部を希望いたします -

という風になっていた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

はぁ。

「それにしても、卓弥、って言ったっけ。お前なかなかやるじゃないか」

「まあ、隼先輩ほどでは・・・」

「おぬしもなかなかワルよのぅ」

隼と卓弥は2人で笑っていた。夏葉は困ったように笑い、友達のほうへと向かった。

「じゃあ、高校生活はきっと楽しいものになるぞ、龍哉!!」

隼は去っていった。

残ったのは俺と卓弥。

「・・・さぁ、俺もかえ・・・」

「“まて”」

卓弥の動きが止まる。ばれなきゃあ言霊をいくら使おうがかまわない、はず。

「さ〜〜〜て、どこがイイ?背中か?腹か?頭か?」

俺の殺気に、動けない卓弥は驚きと、恐怖が混ざった表情を浮かべ、

「・・・なあ、話し合わないか?」

「無理」

そして断末魔が響いた。




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