第二十六話「やっと高校生活」
俺は高校にいた。
今日の朝、沙理奈の家から登校してきたのだ。
昨日あんなことがあったためか、昨日の入学式のことが、一週間も前のことのように感じる。
教室はもう人で満ちていた。
夏葉がやってくる。
昨日の席替えで、傍観者側にいた俺たちは、席が近くなっていた。
夏葉の隣を希望する男もいたのだが、夏葉はほかの女子と一緒にこちらへ避難していた。
と、いうことで、あいつにはもう友達ができていた。卓弥ともども、うらやましい奴だ。
「・・おはよう」
俺は声をかけてみる。昨日は結局話すことがなかったのだ。
「・・・・・・・」
夏葉はビクッとしてこちらを少し見、そして自分の席へと座った。
俺は首を傾げていた。
「・・・どした?ふられたのか?」
いきなり背後から声。驚いてむくと、卓弥がいた。
「・・・だから、そうゆう関係ではないって、何度言ったら・・・」
やめた。
こいつには何度言っても効果はない。
それにしても、夏葉は変だ。昨日俺が寝てた部屋に入ってきたときも、武たちの後ろで黙ってただけだったし、今日もあからさまに俺を避けている感じだ。
「おっしゃあ、それじゃホームルーム始めるぞ〜〜」
谷口が入ってきたので、卓弥の冷やかしも、俺の思考も中断された。
放課後。
俺はかなり疲れていた。
「いやぁ〜〜〜、なかなか高校の勉強はきっついねぇ〜〜〜☆」
隣で言う卓弥は、しかし楽しそうだ。
こいつの言うとおり、俺が今疲れているのは勉強の所為だ。
中学とは比べ物にならない。マジで難しい。
といっても、まだつかみの段階なのだが。
「んで、お前やっぱ振られたのか?」
卓弥の声。俺はだるそうに答える。
「だから違う。そうゆう関係じゃない。・・・というか、今日から部活見学だろ」
そう。俺たちは今部活見学へと向かっているのだ。
いや、正確には見学ではない。
なぜなら、隼と卓弥の計略によって、俺の部活はもうすでに決まっているからだ。勿論卓也もだが。
「えっと、・・・確か、この奥だったな」
俺たちは学校の一番奥へと向かっていた。
角を曲がったところに、その部活はあった。
『総合格闘技研究部』
そう書かれた看板は、結構新しかった。部室は結構大きかった。
俺たちは戸を叩く。
「失礼します〜〜」
卓弥が入る。と、同時に後ろにのぞける。
「んのわっ!!」
飛んできたのは、正拳突き。放ったのは、部室の中の人間。
「へぇ。結構いい反応するじゃン☆」
俺は一瞬マッチョな人間を想像したのだが、中から出てきたのは、たれ目の、軽そうな(性格が)人間だった。
「んで、君らが隼の?」
「そうだって。いきなり正拳突きかます奴がどこにいんだよ」
隼が遅れて出てきた。
「ここ」
「まぁったく、お前は・・・そりゃそうと、我が部へようこそ!!」
隼は俺たち2人をさっさと部室の中に連れて行く。軽い男も続いた。
部室は結構広く、きれいだった。どっちかって言うと、事務所って感じだ。
「お前らで部員は5人だ」
「部員って、勝手にカウントするなよ」
俺は一応つっこむ。
「あれれ〜〜?これはなにかなぁ、龍哉君?」
隼が見せたのは、あのときの入部希望書。
さすがに俺も言い返せなくなっていると、中から声が聞こえた。
「・・あれ、何だ、お前らもか」
「その声は、・・なんだ、優哉、お前もか」
卓弥が話しかけてるところを見ると、知り合いのようだ。俺も、どこかで見た気が・・・
「えっと、お前は深月だったよな。話すのは初めてだったっけ」
思い出した。こいつはクラスメートだ。確か入学式、いや昨日だが、早速卓弥と話してた奴だ。
「俺の名前知ってるか?」
「・・・すまん」
優哉と呼ばれたそいつは、笑っていった。
「まあ、それも仕方ないな。この学校じゃあまだ無名だし。じゃあ覚えとけよ」
優哉はそばにあった椅子にのって、ポーズをとって言った。
「俺様こそは、港市一の人気者(自称)にして、港市一の体育選手(自称)、そして、みんなの優しいお兄さん(自称)こと、
くさなぎゆうや
草薙優哉だーーーーー!!!!」
そして、椅子から「とうっ」っと飛び降りた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
俺は思わず引いてしまった。ポーズに名乗りもどうかと思うが、全部自称とつけてるところが。
が、ほかの3人はというと、
「よっ、サイコーだぜ、優哉!!」(卓弥
「いいねぇ、お前。これなら部員の勧誘も進みそうだ!」(隼
「お〜〜〜〜、こりゃあ面白いやつだねぇ。ま、僕にゃあかなわないだろうケド☆」(軽い男
「はっはーーーー!!俺様の知名度がこの学校に広がるのもそう遅いことじゃないなぁ!!」(優哉
だめだ、こいつら、早く何とかしないと・・・・
ん?まてよ・・・・
「隼、俺たちで部員5人って言ったよな。優哉は入ってるのか?」
「もち」
・・・・・・・・・・・・
「隼って3年だよな」
「ああ」
「えっと、そっちの人は・・」
「ああ僕ぅ?そういえば自己紹介まだだったねぇ☆僕は片山風太郎。フウちゃんって呼んでいいよ。
ちなみに隼と同じ3年だよぉ」
「・・・・二年は?」
「「いない」」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ま、これで部活として続けられるし。早速活動といくか」
「「待ってましたーーーー!!」」
隼の掛け声に、卓弥と優哉が続く。
俺の手が上がる。見ると、風太郎が俺の右手をつかんで、持ち上げていた。
はぁ、これからがすっごく不安だ・・・・
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