第二十七話「戦闘と驚愕」
「おらおらおらおらおらおらおらーーーー!!!!」
「なんのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
優哉の連続蹴りを卓弥がかわす。そして卓弥が一瞬の隙を突いて低く飛び込む。
そのまま優哉の軸足をつかみ、押し倒そうとする。
しかし、優哉は両手で床に手をつき、倒れるのを防ぎ、卓弥のしがみついた左足を振って、卓弥を振りほどく。
卓弥も負けてはいない。その遠心力を利用し、右手を床につけ、そこを軸として回転、回し蹴りを繰り出す。
肉と肉、骨と骨がぶつかる鈍い音、そして2人は互いに受けた衝撃でそれぞれはなれる。
「おお〜〜〜〜☆すごいじゃん、2人とも」
風太郎がはやし立てる。
俺は、と言うと、違う場所で隼にのめされていた。
事の起こりはこうだ。
「えっと、これはどうゆうコトなんだ?」
俺は隼に問いかけた。
「どうゆうって、この先が道場だ」
この先って・・・・・
俺たちは部室の奥の本棚をずらして現れた地下への階段を、下ろうとしていた。
「かっこいいじゃんか!!」
「やっぱ俺様には普通の道場は似合わないし。この部に来て正解だったぜ!!」
卓弥と優哉はのんきに話している。
「・・なあ、風太郎」
「フウちゃんって呼べってば」
俺は無視して続ける。馬鹿2人はもう地下に行ってしまっていた。
「これどうやってつくったんだ?」
「ん?隼が、言霊で」
俺は驚いて風太郎を、そして隼を見る。隼がこともなげに言う。
「ああ、風太郎のこと言ってなかったな。こいつは俺たちのこと、言霊のことを知ってる。使えないけどな。一般人で知ってるのは、この学校でこいつだけのはずだよ」
隼は言う。風太郎がいつものように(少なくとも、俺が見た中でははっきりと)笑う。
「ま、気にすんなって。それにこいつは信用できるし」
「それって、信用できなかったらどうするつもりだったんだよ〜〜」
風太郎が大げさに手を広げて見せた。
「冗談だって。まあいい。龍哉、お前もとりあえず下行け」
促されて、地下へいく。
そこはとても地下とは信じられなかった。普通に体育館並みの広さがある。
「・・・これ、一人で・・・?」
隼は答えた。
「そんなわけあるか。まあやろうと思えばどうかもわからんけど。沙理奈さんが、ちょっとな。校長にも許可をもらってる、はずだ」
はずってところが怪しい。
「「おらああああああああ!!!」」
声がしたと思ったら、もう馬鹿2人が組み手を行っていた。
「やる気があっていいねぇ〜〜☆しかもやることがあってるのがいい♪」
は?と言う風に、俺は風太郎を見た。
「ああ、この部活は表向きは愛好会だけど、実質は戦闘力強化の部活なんだよ」
隼が明らかに面白そうに言った。
「ってなわけで、いくぞ!!!」
「・・・っっっえええええええ!!!??」
という次第で、一日目は終わった。
俺は交代に隼と風太郎の相手をさせられ(馬鹿2人が戦闘に熱中して、2人ともKOしたため)、体力が尽きていた。
早く帰って寝よう・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!?
これは、言・・・・
上を向いた。そこには、俺に向かって牙を突きたてようとする、狼型の・・・・・・
回避が・・・・間に・・合わ・・・な・
「ギャウッ!?」
その狼が突如横に吹き飛んだ。よく見ると、腹に剣が刺さっている。
「あぶ、あぶっ・・・ねぇな、・・・・はぁ」
そこには、あろうことか―――――――
卓弥が、いた。
「おま――――」
「話は後!!とりあえず、あいつをどうにかしろ!!」
見ると、狼が立ち上がっていた。腹から剣が抜け落ちる。
卓弥の手には、それと同じ型の剣が握られていた。しかも、この剣は・・・・
「お前、昨日のは、お前だったのか?」
「それも後!!お前も言具を出せ!」
俺は戸惑い(沙理奈の言葉が頭に浮かんだ)、狼が来たのを見て、心を決めた。
「“正輝”」
そして現れた青竜円月刀を、まっすぐに突き出す。
それはしかし、簡単にかわされた。
「ばか、お前そんな闇雲で当たるわけ――――っ、“大地よ、盾となれ”」
せりあがった地面に、狼はぶつかり、ひるむ。
「おら、“双雛、切り裂け”!!」
卓弥の持つ剣が、せりあがった地面ごと狼の前足を切り捨てる。
すかさず俺が青竜円月刀を構える。
「“正輝、貫け”!」
狙いたがわず、顔を突き刺し、狼は消滅した。
俺は少しくらっとなったが、部活の疲れだろう。
「・・・・ふぅ、おわったぁ」
卓弥が言う。俺は疑問を発する。
「・・・お前、言霊が使えたのか?」
卓弥が当然のようにうなずく。俺は少し腹立たしかった。
「何でもっとはや・・く・・・?・・・・」
俺の意識は急に闇に引き込まれていった。卓弥の驚いた顔が見え、そして何も考えられなくなった。
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言霊へモドル