第三十二話「最強はだれだ?in部活2」
「さ〜〜〜〜あ、やってまいりました!!!通算で第三回目となる我が総合格闘技研究部の最強決定戦!第一回戦は通例どおり『死』の札を引いた深月龍哉と、『殺』の札を引いた草薙優哉との対戦です!」
「・・なんかフウちゃんのキャラが違う気がすんですけど・・・?」
「あいつはマイクもつと性格変わるんだ。本物顔負けの実況アナウンサーか、さもなければさすらいの歌手になっちまうんだよ」
ああ、さっきから他人事のように・・・こっちは死ぬ思いで必死に優哉の攻撃を避けてるってのに・・・
「オラオラ、どうした、龍哉?ほら、言霊って力使っていいんだろ?」
確かにそうだが・・・うぉっ!!アブねぇ・・・・
俺は一回後ろに飛んで距離をとった。風太郎の実況が続く。
「そう!!なんと今日は特別ルールで、相手を殺す以外は何でもあり!!言霊?オッケー!凶器?銃刀法違反が何だってんだ!?火薬?ドカーンといけ!ただしばれないように!!」
といってもばれることはあるまい。ここ地下だし。
「時間も無制限、待ったなし、相手が負けを認めるまでのデスマッチだ!さあ、生き残るのはどっちだ!?」
「ってことで、腕の一本や二本や三本は覚悟しろよ?」
マテマテマテマテ!!
「はや、と、うゎ・・・・言霊、ありって・・・・っくぅ・・・死人が出るぞ!?」
「平気平気、そう簡単には死なないって。怪我しても治せるし」
隼、俺決めた。お前も卓弥と一緒にあの世に送ってやる!!
って、その前に俺が昇天しそう・・・・・
「・・・っちぃ!!“我命ずる!大地よ、彼の者の動きを抑えよ!!”」
優哉の足元から土がコンクリートを突き破りたたみも破って現れ、優哉の足にからみつく。
「・・・ぅぉお!」
間一髪のところで避けられた。バランスを崩したところを、すぐに蹴りで追撃。が、後ろに飛んで避けられる。
「・・・それがお前らの力か・・・俄然やる気が出てきた!!」
「気をつけろよ〜〜龍哉〜〜。そいつは本気で殺りにくるからな〜。俺のときもそうだったぜ〜〜」
くっそ、馬鹿卓弥めぇ!!優哉が俺に拳を打ち込んでくる!俺はまともに受ける。
「あ、それからやる気が出たときの優哉は通常より強くなるから。そこんとこ注意しろよ〜〜」
そうゆうことは先に言え、っつーのっ!!
「・・っだぁ!!」
俺は無理やりに腕を振り、反動で後ろに飛んで距離をとる。
くそっ、マジで化け物かよ・・・受けた両腕が痺れてる・・・・
「どうしたぁ!防戦一方じゃかてねぇぞ!―――いくぜっ!!」
優哉の突進!だがそのぐらい予想はついてる!
「“大地よ、彼の者の・・」
「おせぇっての!」
なっ・・急加速しやがった!!言霊が間に合わない!
「“正輝!”」
「っっらあぁ!」
ごっ!!
寸前で出した正輝で、ようやく防御する。そして反動で再び距離をとる。
「・・・お前、そんなことまでできたのか!?」
「・・・お前、その強さは人間としておかしいだろ・・」
そのまま動かない。俺は優哉の動きを見て、優哉は、俺の手の中の正輝を見て。
張り詰める空気。それを破ったのはドアが開く音。
俺はすぐにそっちを見る。そこには湘が・・・・・・・・
そして俺の意識は途切れた。
「・・・・えーーーと?俺は負けたことになってんのか?」
「・・どうやらそうみたいだね」
「・・で、湘。何でお前はここに?」
「・・・入部届け出した途端に、フウちゃんと闘らされて・・・・・」
コイツ・・もうフウちゃんて呼んでんのか・・・
「まぁ、気にするなって。俺も負けたんだし」
「・・・卓弥は隼とか・・・」
「そ。しかしあの3人・・・強すぎ」
「僕も同意見」
ただいまの状況。敗北者+負傷者エリアで俺と卓弥といつの間にか部員と化していた湘が観戦している。
決勝のサバイバルを。
一試合目、俺が湘に気をとられてるうちに、優哉に気絶させられ敗北。
優哉の言い分はこうだ。「フツーにああいう場面でなんかあったら、それが衝突の合図だろが」
・・・・・・漫画の見すぎだろ・・・・・
二試合目、隼VS卓弥、湘の話によるとどうやら2人とも言具出して闘ったらしい。そして卓弥の負け。
内容を聞いてみたい気もするが、卓弥が妙にへこんでるのでやめておこう。
三試合目、急遽組まれた風太郎VS湘の試合。もちろん戦闘経験が少ない湘が勝てるはずもないが、
2人の話だと瞬殺だったらしい。
「しかし、何でまた入るつもりになったんだ?」
俺は湘に問う。
「いや、君らがいるって聞いてさ。負けっぱなしじゃいられないからね」
またこの理由か・・・負けず嫌いも大概に・・・って俺が言えることでもない、かな?
「・・・そういえば、湘は言霊の事を・・・・」
「ああ、あんときのことか。結構湘はすんなりと受け入れてくれたよな・・・って、お前気絶してたんだっけ」
「そうそう。僕が入ったときには優哉のストレートが腹にクリーンヒットしてたからね」
サバイバルを見ながら俺は続きを聞いてみる。優哉はバリバリで2人に攻撃をしている。
「・・・あれはしょうがない。それより、湘も言霊の事を・・・・・」
隼が優哉の攻撃をかわし、確実に反撃を加える。
「うん。安心していいよ。僕は疑わないし、それに下手に広めたりはしないから」
風太郎は、自分のところに来た攻撃のみを受け流し、相手の力を利用して攻撃を与える。
「ホントか・・・・?」
俺は少しうれしかった。湘はまあいいやつだと思ってたけど、良識もあるなんてな。
「ほんとだよ。僕はこれでもUFOの存在や霊能力を信じてるからね」
・・・・・・は?
前言撤回、コイツも優哉に負けず劣らずの野郎だ・・・・・
俺は卓弥のほうを向く。試合の観戦に集中していた。仕方ないので試合に目を向ける。
「「あ゛」」
卓弥と湘の声が重なったのと、俺が何が起こってるのかを理解するのとが同時だった。
優哉がついにリングアウト、つまり敗北者ゾーンに吹っ飛ばされてきたのだ。
俺の顔面へと向かって。
俺は本日二度目の気絶に、覚悟を決めるまもなく突入した。
目を覚ましたときは、家だった。
「大丈夫?龍哉」
上から覗き込んでたのは宗治狼。卓弥も視界の端にいる。どうやらまた卓弥に運ばれて来たらしい。
「おっ、目ぇ覚ましたか。んじゃなぁ〜〜」
そういって卓弥はさっさと出て行く。
「ちょっと待て、結局どうなったんだ?」
「試合か?結局隼さんとフウちゃんは決着がつかなかったから、そこで終わりになったけど?」
隼はわかってたが、風太郎もそこまでとは・・・
「ちなみに隼さんは言具を、フウちゃんは壁の大刀を使ってやったけど、それでもダメだったな」
・・・・武器も使ったのか!?・・・・そんなに強いのか・・・・・・俺は・・優哉にも・・・
「大丈夫なの?龍哉」
「・・・・大丈夫でもない・・」
時間を確認する。7時になるところだ。いつの間にか卓弥は帰っていた。
「・・・・夕飯、またテキトーに作って食べててくれ。俺は出かけるから」
俺は立ち上がる。
「また〜〜?龍哉料理の特訓するんじゃなかったの?」
うっ!!
「・・・後でもできるだろ、それは。俺の分も作っといてくれよ」
そういって俺は玄関を出る。向かう先は・・・学校だ。
「“正輝”」
今日の戦いで、俺がどれだけの強さかってことがわかった。結局弱いって事だが。
となったら、強くなるためには修行、だろう。
俺は正輝を構える。青竜円月刀・・・・この武器も使い慣れていない。
「“大地よ、幾筋もの柱となれ”」
石柱がいくつも立ち上る。俺は息を吐き出す。
――――強く、なりたい。あのときの約束を、守るためにも。
俺は月夜のした、がむしゃらに正輝を振るった――――
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言霊へモドル